地域金融機関が事業性評価をしないと生き残れない理由

財務コンサルタント、中小企業診断士の松田一郎です。

事業性評価について第3弾です。

何故、地域金融機関が事業性評価をしないと生き残れなくなるか。

理由と条件があります。

1.中小企業の減少

2.銀行の数は減らない

3.信用保証協会の利用縮小

4.地域銀行は、根付いた地域でしか生き残れない

5.審査にAI技術が導入される(事業性評価の触媒になる可能性がある)

中小企業が減少し、銀行数が減らないとどうなるか。

当然、競争が激化します。格付けの高い企業の奪い合いです。優良企業です。

過去の数字や保証、担保で貸し続けると、銀行の評価は一律にほぼ同じです。そうなると、どうなるか。

金利の値下げ競争になり、体力が弱いところが負けます。それはどこか?

地域密着銀行である地銀や信金です。特に信金は生き残れるエリアが小さい。根ざした地域外で勝負が出来ないのです。小さいパイで、優良企業を取り合うことには限界があります。

特に信金は、信用保証協会の利用率がダントツ高いです。

信用保証協会は、国のお金で成り立っています。国が保証協会の依存度を減らすようにするのは容易です。協会への予算を減らせばよいのです。日本政策金融公庫が信用保証協会の保証をする銀行です。そう考えると、中小企業の貸出のほとんどが、政府の支援で成り立っています。

税収が減る中、協会への予算を減らすのは間違いありません。そうなると、信用保証協会に依存している銀行にとって、死活問題です。

繰り返しますが、保証なしのプロパーができる会社は、メガも含めて金利競争となり、体力が弱い銀行は金利競争に負け、太刀打ちできなくなります。

そして、AIの進展。AIは銀行の体制を大きく変えるほどのインパクトがあると思っています。現在、銀行で絶対権力をもっているのは、本部の審査部門です。

企業格付け始まってから、審査部のさらに権力が増しました。検査マニュアルと過去の数字で貸付した結果、支店のの権限は大幅に縮小され、支店は単なる窓口と化しました。とある銀行の支店決済は、500万です。これでは、支店長は何も出来ません。

AIの進展は、銀行にとってチャンスだと捉えたほうが良いです。AIが得意なのは、過去の判例や数値だからです。法律や判例で判断する弁護士は、AIに仕事を奪われる可能性があります。税理士も同等です。代理人制度がある以上、なくなりませんが。

検査マニュアルという法律と過去の数字は、AIの得意分野です。審査部門のエリートにとっては脅威となります。

事業性評価は、前線部隊である支店の権力復権のチャンスだと思います。事業性評価は、デスクに座っている本部の人間では出来ません。前線部隊である支店の営業マンしかできません。

体力の少ない銀行は、どこに融資するか。グレーゾーンの企業に貸すしかありません。

グレーゾーン企業は、競争が少ないです。グレーゾーン企業に事業性評価をすることで、貸出可能かどうかを判断し、世間より高い金利で貸すのです。

格付けでいうと、要注意先か要注意管理先です。保証協会使わずに要注意先に貸出するのです。

弱者戦略は競争が少ないところで勝負するしかありません。これは、中小企業の戦略と一緒です。

AIの進展は、事業性評価を加速させるものだと思っています。

ただし、実践できるかどうかです。

変化を恐れる地域銀行は衰退します。変化をチャンスと捉え、チャレンジする銀行は生き残ると思います。

事業性評価とは、国に守られた金融行政からの脱却であり、国が銀行へ国に頼らず、自前で生きろと通告した制度です。

事業性評価をするなら、件数ノルマではなく、プロパー比率を上げる目標を立てるべきです。

変化をチャンスと捉え、リスクを取って行動する。これは、どこの企業も一緒です。

 

萩の旅館です。

親孝行を兼ねて行ってきました。