リモートワークで雇用管理はどう変わるのか?


パートナーコンサルタント 三枝 元(中小企業診断士)

コロナ禍の影響で、皆様の会社でもある程度リモートワークを進められているかと思います。リモートワークで従業員に求められることや、雇用管理がどう変わるのかについて、私なりの考えを述べてみたいと思います。

◆人材評価の基準

一般的に従業員の評価は、能力評価(その人の学歴や経歴から予想されるスペックで評価する)、実績評価(パフォーマンスで評価する)、情意評価(やる気や協調性、規律といった態度で評価する)の3つから行われます。

また、「パフォーマンスでの評価」と「プロセスでの評価」の2つから評価するという考え方もあります。たとえば営業マンを考えた場合、販売実績というパフォーマンスは、どうしても運不運による影響を受けます。よって、正しい営業プロセスを踏んでいれば、それをもって評価するという考え方があります(コンピテンシー評価)。

◆今までの職場での管理の特徴

職場では、上司は日頃、直接部下の働きぶりを見ていますので、情意評価やプロセス評価はしやすいでしょう。

また、職場では、上司は部門の負荷状況を見て、臨機応変に余裕のありそうな部下に仕事を割り当てることができます。特に日本企業の場合は、欧米企業と比べて個人の職域が不明確であり、その点では柔軟に仕事に対処することができます。

◆リモートワークでアメリカ型雇用管理が進む

一方で、リモートワークでは、情意評価やプロセス評価はどうしても困難であり、必然的に実績評価(パフォーマンス評価)の比重が高くなります。従業員にはより実績で評価されるようになります。

また、それぞれが自宅等で仕事していますから、上司は部下の負荷状況を正確に把握することができず、柔軟に仕事を割り当てることが難しくなります。よって、今まで以上にあらかじめそれぞれの職務内容を明確に決めておく必要があります。従業員1人1人は与えられた職務内容のみに集中し、そのパフォーマンスによって評価されることになります。

アメリカは職務主義といわれます。すなわち職務記述書と呼ばれる個人の職務内容・期待水準が明確に記述された仕様書に基づいて雇用管理されます。したがって、職務記述書には書いていない仕事は与えられませんし、やる必要もありません。日本でもリモートワークの進展で必然的にアメリカ型職務主義に移行するのではないかというのが私の見立てです。

さらにリモートワークでは、上司は部下の仕事ぶりが分からないので、どうしてもフォローアップは難しくなります。個人にはより一層、自律意識や自己責任感が求められるようになります。育成やフォローアップの必要性がある新卒採用は控えられ、即戦力が期待できる中途採用が進むのではないでしょうか。その点でも欧米型の人事制度が進むように思えます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です