社会的にどうでもいい仕事


パートナーコンサルタント 三枝 元(中小企業診断士)

新型コロナウイルスに伴い多くの企業でテレワークが導入され、仕事のあり方が見直されています。皆様の会社でも「これはいらないよね」という無駄な仕事が結構あるのではないでしょうか。

◆Bullshit Jobs

「無駄な仕事」とは、「顧客にも社会にもまったく必要がない仕事」です。社会人類学教授のデヴィッド・グレーバーは、5つの「Bullshit Jobs」を挙げ、海外で話題になっています。「Bullshit Jobs」を直訳するのがためらわれるので、ここでは「社会的にどうでもいい仕事」とします。

①Flunkies(太鼓持ち)

受付係、指示を受けるだけの秘書、ドアマン、管理職を作るための補佐的ポジションなど別の人が自らの重要性を感じるためにある仕事。

②Goons(用心棒)

インチキな説明をして顧客に売りつける広告やPR、営業、マーケティングなどの仕事。あるいはロビイスト、企業弁護士、広報など、雇い主のために相手を攻撃したり影響を与えようとしたりする仕事。

③Duct Tapers(落穂拾い)

組織的な欠陥が理由で存在する仕事。無能な上司の間違いによるダメージを回避したり、機械化できるのに組織の都合で手作業でやっていたりするような仕事など。そもそもあってはならない問題の手直しに従事している。

④Box Tickers(社内官僚)

ただ業務のチェックだけを行なう管理者、提出することだけが目的で使われることがない報告書や社内広報誌の作成者やそのためのコンサルタント、意味がないのに惰性で行われている調査の回収係など。

⑤Task Makers(仕事製造人)

訳もなく誰かに仕事を振るだけの人や、ほかの人にどうでもいい仕事を振る役割の人。部下に指示の必要がなく、仕事を割り振るだけの中間管理職など。無駄な業務を生み出す仕事。

◆今の仕事は社会に貢献しているのか?

「いったい自分の仕事には本当に社会にとって意味があるのか?」と考えてしまいそうです。あるイギリスの調査では、実に労働者の37%が「社会に対して意味のある貢献をしているとは思っていない」ことが分かりました。「自分の仕事は価値がある」と思っているのは半数程度に過ぎず、残りの13%が「分からない」と回答しています。

コロナ禍で自粛が求められる状況の中で、「自分たちの仕事あり方について」考えられておられる方もおられるのではないでしょうか。グレーバー教授は思想的にはアナキストで、2011年の「ウォール街を占拠せよ」運動の理論的支柱とも言われる人物ですから、「Bullshit Jobs」はなかなか過激な内容ですが、企業内で業務の見直しが迫られる中で大きな示唆を与えているように思えます。

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