ダイバーシティというマジックワード~そもそも本当に多様性が必要なのか?

パートナーコンサルタント 三枝 元(中小企業診断士)

◆ダイバーシティはかくして失敗する

ダイバーシティというと、多くの人は「女性や外国人の登用」ということを想起するようですが、そもそもダイバーシティとは、「人の多様性」のことで、「多様な意見や価値観を取り入れることで、組織の活性化・企業価値の向上を図ること」をダイバーシティ経営と呼んでいます。

「ダイバーシティが大事だ」とはよく耳にします。しかしながら、世間での取組を見ると、浅はかなものにとどまっており、おそらく上手くいかないだろうなというものも少なくありません。

1つ例を挙げてみましょう。仮に社歴が長いプロパーの10人の男性社員しかいない職場があったとします。ここで「これまでの考え方にはとらわれないフレッシュな視点を持った人材を取り入れて活性化しよう」と20代の女性を2人、異業種から採用したとします。よくありそうなことですね。

さて、結果はどうなるか?おそらく新たに採用された2人は、その職場に馴染めず辞めてしまうか、その職場の価値観にすっかり染め上げられてしまうでしょう。新たな人材2人は所詮、組織の少数派にすぎず、多数派の同調圧力に晒されるからです。

つまり中途半端に異端者を入れたところでまったく多様性など図られないのです。真にダイバーシティを実現したいなら、年齢、性別、経歴、得意分野などが異なる様々な人種からなる偏りのない組織をつくるといった思い切った人材のシャッフルが必要です。

◆御社は本当に多様性が必要?

私の印象ですが、「世の中、ダイバーシティが話題になっているのだから、必要なのだろう」と「ダイバーシティ」という言葉だけが1人歩きし、「本当に我が社に必要なのか」についてはあまり議論されていないのではないでしょうか。

私は、まず「本当に御社にはダイバーシティが必要なのか?」ということを問いたいです。「これまで男性市場をターゲットにしていたが、これからは女性をターゲットにする」「インバウンド需要をねらう」「新たにシルバー世代をねらう」といったように、これまでとは異なるターゲット層をねらうのであれば、自社にはいないタイプの人間を雇う必要があり、ある程度はダイバーシティが必要でしょう。

しかしながら、多くの場合、これからも従来とさほど変わらないビジネスを続けるだけなのではないでしょうか。この場合、ダイバーシティは必要ないどころか、単に混乱を招くだけです。

◆多様性とは「個を生かす」こと

それに単に多様な意見を取り入れたいのであれば、わざわざ今までと違う毛色の人間を雇う必要などありません。単に社内の多様な意見に耳を傾ければよいだけです。御社で多様な意見が出てこないのは、単に多様な意見を聞く土壌がないからだけかもしれません。同じ社員といえども、みな考え方がまったく同じであるとは考えにくいです。「多様性を生かす」とは「個を生かす」ということだということを肝に命じ、間違っても女性や外国人を雇うといった上辺だけの多様性にとらわれないで頂きたいと思います。

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